仙台国際日本語学校

「仙台国際日本語学校」は宮城県仙台市にある日本語学校です。

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仙台国際日記(ブログ)

Speech Contest 2019 Scripts#9 「苦楽の生活をしましょう」ANGGRAENI IRMA(Indonesia)

2019.03.22

2月28日に開催した今年度の弁論大会
「楽」をテーマに、クラス予選を勝ち抜いた9人の弁士が熱弁をふるいました。
また、3組が歌や楽器の演奏を披露し、こちらも大いに盛り上がりました。
弁士のスピーチは後日動画としてお届けする予定ですが、ここでは原稿を公開します。


当日登壇した学生のものはもちろん、惜しくもクラス予選で涙を飲んだ学生の原稿の中にも、
非常に素晴らしい出来のものが相当数ありましたので、順次ご紹介していきます。
原文そのままですので、多少の読みにくさはあるかもしれませんが、是非ご一読ください。




苦楽の生活をしましょう ANGGRAENI IRMA(Indonesia)


IMG_2674.jpg


 初めて取り組むことは、いつも苦しくて大変ですね。
 たとえば、ここにいるみなさんは、ほとんど自転車にのることができますね。でも、初めて自転車に乗った日のことを思い出してください。どうでしたか。なんかいも転んだり、ぶつかったり、大変だったでしょう。もうやめようと思ったかもしれません。でも、たくさん練習をしてまっすぐ転ばないで、自転車に乗れたときに、どんな気持ちでしたか。とても、気持ちがよかったですよね。
 わたしにとって最近いちばん苦しいものは漢字です。インドネシアはアルファベットを使う国ですから、日本語学校に入る前に漢字をぜんぜん勉強しませんでした。そのとき、わたしは漢字が十字しか知りませんでした。ひつようですが、大事じゃないと思いました。
 初めて日本に来て、はねだ空港についたとき、空港の中で、漢字は必要ありませんでした。全部、英語の訳がついていたので、やっぱり、漢字はそんなにできなくても大丈夫かなと思いました。
 仙台について、生活をはじめると、どこでも、なんでも漢字です。レストランのメニューも、コンビニの商品に書いてあるのも全部漢字です。
 わたしはイスラム教徒なので、食べてもいい食物がきまっています。だから、一つ一つの食べ物に、どんなものが入っているか、調べなければなりません。でも、日本の食べ物には、全部漢字で説明がありますから、本当に困りました。ここからわたしの漢字との戦いが始まりました。
 漢字の授業は難しくて苦しくて大変です。最初の漢字の大きいテストの結果は凄く悪くて自分のことが恥ずかしくなりました。
 その後そのテストの紙を部屋の壁にはっています。毎晩、その紙を見ながら漢字を勉強しています。初めは本当に大変でした、たくさん書いたのになかなか覚えませんでした。「もういやだ」と思いました。でも自分のしょうらいを考えたら、漢字は必要です。あきらめることはできません。
 そして、わたしは、昔、同じように苦しんだ経験を思い出しました。
 運転免許を取る時、運転免許試験は凄くひどかったです。運転免許試験場の人はこわくてきびしい人でした。がんばったのにきんちょうで合格できなくてがっかりしました。
 「もういやだ、いらない。そんな大変なことは二度目はしたくない」と思いました。でもやっぱり運転免許はほしいです。苦しいですががんばろうと思いました。その後勉強や練習にむちゅうになり、やっと運転試験の二度目のちょうせんで運転免許を取ることができました。気持ちがよかったです。「がんばって、よかった」と思い出しました。
 そして、わたしは考えました。そうか、あの時と同じだ。大変なことをがんばって乗り越えたら、きっと、いいことがあるでしょう。
 そう思って、今、漢字の勉強もがんばっています。
 みなさんも、自転車に乗れるようになった時の気持ちを思いだしてください。たくさん転んで、痛い思いをして、大変なことがたくさんあればあるほど、のれた時の楽しい気持ちは大きいと思います。
 わたしも、この漢字の勉強を乗り越えることができたら、きっと、日本での生活が楽しくなるでしょう。
 苦しいことのさきには、きっと楽しいことがある。そう思って、みなさん、一緒にがんばりましょう。




優秀なイルマさんだけに、それほど漢字に苦しんでいるとは思いもしませんでした。
「最初の漢字の大きいテストの結果」も今調べてみたら、そんなに悪くはありません。
でもきっと彼女の中では許せなかったのでしょう、「部屋の壁にはって」しまうほどに。


ちなみに、その後の漢字のテストの点数を見てみると、努力の甲斐あってか見事にアップ。
この調子だと漢字を自転車や自動車のように乗りこなせるようになる日も、そう遠くはなさそうです。


(瀬戸)

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