仙台国際日本語学校

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仙台国際日記(ブログ)

『吾輩は  である』#3

2021.04.13

今年の1月から2月にかけて、1クラスのiタイムで新たな取り組みが行われました。
その概要については、担当されたS藤先生の文章を引き、すでにお伝えした通りです。


現在、学生たちの作品をご紹介中。
今回はTャイさん(ベトナム)作の『吾輩は雀である』です。

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『吾輩は雀である』

 吾輩は雀である。名前はまだない。吾輩の趣味は米を食べることである。

 見た目は白くて茶色くてかっこよく、その上、丸い体がとても可愛らしくもある。吾輩は小さい村の高い木で生まれた。今住んでいる所は優しいおじいさんの庭である。得意なことはさえずり。吾輩のさえずりの技術はとてもすばらしく、その音はとてもきれいである。しかし、他の雀は虫を捕まえるのが上手であるが、吾輩は苦手である。これはここだけの秘密。吾輩はうつくしくさえずりながら米を食べること、この枝からその枝まで飛ぶことが大好きである。一方、大きな鳥やすごい風、いじめる子供などが嫌いである。

 これから吾輩のことを少し話したいと思う。ある日すごい雨が降った。その時生後二ケ月の吾輩はえさを探していたが、その雨のせいでびしょびしょに濡れた。そして寒さのため、飛べなくなった。その時、人のおじいさんが吾輩を拾った。きちんと世話してくれたおかげで、一週間ぐらいで吾輩は元気になった。そのまま吾輩はおじいさんの家に住むことになった。おじいさんの家では籠に入れられていたが、いつも自然を思い出していた。おじいさんがえさをくれるが、食欲がわかない日が続いた。おじいさんの家族は五人いるが、皆毎日仕事が忙しいから、おじいさんだけ一人で広い家にいることが多かった。おじいさんは寂しそうに見えた。

 吾輩は毎日空を自由に飛ぶことを思っていた。おじいさんにはその考えが分かったのかもしれない。ある日雲一つない青空の下、おじいさんに逃がされた。これから前と同じく青空を自由に飛ぶことができる。吾輩は自由だ。しかし、人間はいつも忙しく寂しい。たしかに、吾輩は雀であるのは人間より面白いと思っている。

 おじいさんの家の周りには庭がある。庭には美味しい果物がたくさんあったから、吾輩はここに住むことに決めた。吾輩はえさを探しているとき、とてもかっこいい。その時におじいさんは吾輩の姿を見たり、声を聞いたりしているはずだ。これからおじいさんは毎日楽しく幸せであろう。
 


漱石の『猫」同様、人間(社会)を「吾輩」である雀が客観的に捉えている印象を受けます。
また「雀」の描写は生き生きとしており、エピソードはリアリティーをもって書かれていますよね。
最終段落で「庭」を住み家としたのは「おじいさん」を慕う心が底にあるように感じるのは私だけでしょうか。
恩返しの一つでもしそうな流れですが、このぐらいの距離感で終わるのも悪くないなぁと思いました。


▼本シリーズについては以下も併せてご覧ください。
『吾輩は  である』#0
『吾輩は  である』#1
『吾輩は  である』#2


(瀬戸)

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