仙台国際日本語学校

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仙台国際日記(ブログ)

『吾輩は  である』#4

2021.04.20

今年の1月から2月にかけて、1クラスのiタイムで新たな取り組みが行われました。
その概要については、担当されたS藤先生の文章を引き、すでにお伝えした通りです。


現在、その活動の成果である、学生たちの作品をご紹介中。
4回目となる今回はスペインのSラさんの作品。
驚くなかれ、主人公は何と「布マスク」です。

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『吾輩は布マスクである』

 
 吾輩は布マスクである。名前はまだない。しかし、毎日よく呼ばれる名前は「めんどくさいマスク」である。本当に吾輩の名前かなあ...。去年まで吾輩は双子の兄弟と一緒に袋の中に住んでいた。袋の外が見えなかったため、少しつまらなかった。
 
 しかし、去年、今住んでいる所に来て、他の友達と一緒に住むことになった。それは本当にうれしいことだ。それだけではなく、ほぼ毎日外に出かける。初めて外に出たとき、とても緊張していたが、本当に楽しかったことを覚えている。人間は吾輩を顔にかけて、外に出た。最初は寒くて、臭いと思った。しかし、すぐに慣れて、目の前の新しい景色を味わおうと思った。始めは人間は散歩していたため、周りをじっくり見られていた。しかし、突然、人間は自転車というものに乗り始め、スピードアップした。現在、毎日普通に自転車に乗っているが、初めてのときはすごく怖かった。とはいっても、毎日あちこちに行って、新しい景色を見て、新しい経験ができるのはうれしい。
 
 もちろん、悪いこともある。ポケットにいるとき、確かにきつい。なにも見えないし、狭いし、本当にきらいである。他にも嫌なことがある。それはお風呂のときである。人間は風呂が大好きだとよく言う。なぜなら、リラックスできるからだそうである。しかし、吾輩の風呂時間はぜんぜんリラックスができない。風呂の名前は洗濯機である。その風呂は長い時間くるくる回るので、吾輩の目はくるくる回ってしまう。良いことはその後、吾輩はきわめて良い香りがする。実は去年からたくさん仕事が増えた。なぜなら、毎日使われているようになったからである。
 
 なぜ、最近吾輩と吾輩の友達が毎日使われるようになったのか、その理由は危ないウイルスの存在が関係しているようである。しかし、最近人間はそのウイルスに効くワクチンについて、ずっと話している。みんなが予防接種をするようになったら、吾輩は長い休みをとることができそうである。少し寂しいかもしれないが、人間にとってはうれしいことである。


布マスクの気持ちを、あるいは「自分が布マスクだったら」と考えたことがある人はどのぐらいいるでしょうか。
この作品は着想もさることながら、まるで自分がマスク化したかのような「マスク感」が素晴らしいと思います。
私は人の気持ちも十分に慮ることができませんので、この作品と作者のSラさんには、ただただ脱帽です。
何かのコンテストに応募したら、結構いい線までいくんじゃないかとすら思いました。


▼本シリーズについては以下も併せてご覧ください。
『吾輩は  である』#0
『吾輩は  である』#1
『吾輩は  である』#2
『吾輩は  である』#3



(瀬戸)

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